相続登記、住所・氏名変更登記の義務化について

相続登記義務化令和6年4月1日から、相続登記および登記名義人の住所、氏名の変更登記が義務化されることになりました。
義務されることになった理由や、登記をしないでいた場合のデメリットなどをできる限りわかりやすくまとめてみたいと思います。

【 目 次 】

登記名義人とは

日本においては、土地や建物についての「所有権」などの目に見えない観念的な権利を、誰からでも識別できる「登記」という形で公示し、不動産の権利関係について一応の信頼を持たせるという「登記制度」が採用されています。
この登記制度において、特定の不動産について所有者であることを示す欄には所有者になった日付および原因(相続や売買など)とともに、住所・氏名が記載されます。
ここに記載されている者が「登記名義人」となり、当該不動産についての以後の取り引きなどの際は所有者として扱われることになります。

当該不動産を買いたいと思った人がいた場合、まずは当該不動産に登記されている内容が記載された書面(一般的に登記簿謄本といわれるもの)を取得し、そこに記載された登記名義人宛てに売買交渉などのアプローチをかけることになります。
よって、登記名義人が正確に記載されていない場合、不動産を売買するなどの経済活動や開発事業がスムーズに進まないということになります。

相続登記とは

土地や建物の所有者が亡くなった場合に、その不動産の名義を亡くなった方から遺産を引き継いだ方(相続人)へ変更する手続きのことです。

住所氏名の変更登記とは

不動産の所有者が引越しや婚姻などによって住所や氏名が変わった場合に、その登記記録上の名義を新しい住所や氏名に変更する手続きのことです。

なぜ義務化されたの?
背景

相続登記をしていない、または登記簿に記載されている名義人の情報が古く、所有者を特定することができないいわゆる「所有者不明土地建物」は増加傾向にあり、現在では国土の約22%(九州より広い!!)を占めています。
相続人が住み続けることになった家や、資産価値が高く売却などで現金化しやすい不動産は比較的引き継がれやすい不動産ということになるでしょう。
しかし、誰も住む予定のない遠方の実家や不便な場所にあり売れそうもなさそうな土地ということになると、引き継ぎたくないといった事情や、仕方なく引き継いだけど手続きする手間まではかけたくないといった心情から相続登記の手続きがなされない不動産が増えています。
氏名住所の変更登記についても、購入した自宅ならまだしも当面行くこともないような遠くの不動産などになってしまうと、転勤などでこれからも定期的に住所が変わるのでいちいちやってられないといったことや、変更登記をしなくても所有者であることに変わりはないため単純に手間だ、もしくは失念していたといった事情もあり、手続きが放置されてきた不動産も多くあります。
これはいわゆる「空き家問題」の原因の一つとして、近年マスコミでも多く取り上げられていますね。
少子化・高齢化の進む日本において、現状のままではこの増加傾向は止まらないと推察され、この問題を解消する手段の一つとして今回、相続登記、住所氏名の変更登記が義務化されることとなりました。

問題点

所有者が特定できず、不動産の管理ができないことにより主に3つの弊害が生じます。

  1. 町の景観や治安に悪影響が出る
    →建物自体の老朽化が進み、景観を損ねる。やがては倒壊の恐れが生じることにもなる
    →草木が過剰に生い茂り、近隣住民に迷惑が掛かってしまう。害虫の大量発生の原因になることもある
    →空き家であることに目を付けられ、放火や不法侵入などの犯罪の温床になりうる
  2. 災害対策や震災からの復興に支障が出る
    →土砂崩れなどの災害を未然に防ぐための工事に取り掛かれない
    →災害後に町を復興するための整備を行うことに支障が出る
  3. 用地買取りができず、不動産の有効活用ができない
    →一見価値がなさそうに見えても、近隣住民から見ると自己の利便性向上につながる土地であり、購入を希望しているが連絡が取れない
    →実は再開発が進み、居住ニーズが高まっており、不動産業者などが土地の買収をしたいのだが連絡が取れない
登記しないとどうなるの?
  • 登記懈怠の過料に処せられる可能性がある
    相続登記が義務化されるにあたり、相続により不動産を取得したことを知った時から3年以内に正当な理由なく相続登記をしなかった場合、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
    同じく、住所や氏名が変わってから2年以内に正当な理由なく住所・氏名の変更登記をしなかった場合、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。
  • 行政指導や行政代執行を受ける可能性がある
    当然ですが、空き家を適正管理する義務は所有者にあります。
    平成26年11月に「空家等対策特別措置法」が成立し、空き家の適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告といった行政指導、そして勧告しても状況が改善されなかった場合は改善の命令を出すことができるようになりました。
    さらに、命令を受けた空き家に改善が見られない場合は、行政機関が所有者に代わって樹木の伐採や塀の撤去、建物の解体工事などを実施し、その費用を所有者に請求する行政代執行が行われる可能性もあります。
  • 相続手続きが複雑化し負担が増す
    相続登記をしないでいる間に相続人の一人が亡くなったという場合、その方の相続人が相続手続きに加わることになります。
    こうして相続人が増え、場合によっては関係の非常に薄い親族までもが相続人に加わることもあります。
    このような中で遺産分割協議をまとめたり戸籍謄本などの相続登記の必要書面を集めるといった作業は格段に手間がかかることになります。
  • せっかくの現金化のチャンスを失うこともある
    購入希望者などからのアプローチは登記簿上の所有者宛てにあります。
    そのアプローチも住所が違っていれば届きません。
所有者不明土地問題解決へのほかの施策
  • 相続人申告登記の創設
    相続登記ができない理由の中には、遺産分割協議で揉めていて相続人が決まらなかったり、相続人の一人の所在が不明で協議ができないといった事情もあります。
    そんなときに、相続が開始した旨および自らが相続人である旨を申告することで相続による所有権移転登記を申請する義務を履行したものとみなすという制度が創設されます。
    この場合、当該申告をした者の氏名および住所が登記簿上に記載されます。
    この申告は相続人が単独ですることができますが、その者に限り履行したものとみなされ、そのほかの者の懈怠責任は残ります。
    また、その後、遺産分割協議が成立した際は改めて所有権移転の登記をする必要があります。
  • 相続土地国庫帰属制度の創設
    相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度が創設されます。
    ただし、一定の要件および法務大臣による審査があります。
    また、国庫に帰属できたとしても、10年分の土地管理費相当額の負担金を収める必要があります。
  • 登記官による氏名住所変更の職権登記が可能に
    ほかの公的機関から取得した情報に基づき所有権登記名義人の氏名や住所についての変更が確認できた場合には、登記官が職権で氏名や住所の変更登記をすることができるようになります。
    この場合、登記にかかる登録免許税などはかかりません。
    また、ストーカー被害にあわれた方などの保護のため、この変更登記はその方の申し出があるときに限り行われます。
  • 所有者不明土地・建物の管理制度の創設
    所有者不明土地・建物の維持管理を目的とし、裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任する制度が創設されます。
    裁判所の許可があれば売却も可能になります。
  • 管理不全土地・建物の管理制度の創設
    所有者が土地・建物を放置していることで他人の権利が侵害されるおそれがある場合に、管理人を選任し、管理を任せることができるようになります。
  • 長期間経過後の遺産分割の見直し
    相続開始から10年を経過したときは、遺産分割協議を行うことなどができなくなり、画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みが創設されます。

これら以外にも多くの改正があります。

まとめ

以上のように、近年問題化している「空き家問題」を減らしていくため、相続登記などが義務化されることになりました。
義務化されることによって日本全体の地域活性化に資する部分は多くあると思います。
また、具体的な手続きの中には簡易化されより取り組みやすくなる部分もありますが、何よりも相続登記は早めに行うことでより少ない労力で行うことができる制度です。
ここをまず知っていただき、この義務化の情報を機に、少しでも早く取り掛かるんだという方が増えると幸いです。

投稿者プロフィール

鈴木 章宏
鈴木 章宏
池袋に事務所を構える司法書士。
不動産の相続登記や遺言の作成支援など、相続手続きに力を入れています。
相続は事前に準備をしておくことで救われることが多くあります。
一人でも多くの方が相続の事前準備の重要性を知り、ご家族の明るい未来を作っていけるような社会にすべく、有意義な情報発信をしていきたいと思います。

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