お盆にご家族と相続の話をしてみませんか? ~お盆に帰省される方へ~

8月に入り猛暑日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
今年のお盆はご実家へ帰省され、ご親族に会ったりお墓参りをされる方も多いのではないかと思います。
久しぶりに会うご家族もいらっしゃるでしょうし、いろいろなお話をされることでしょう。
さて、今回は「そんなお盆の機会にご家族と相続の話をしてみませんか?」というお話です。

【 目 次 】

お盆とは...

そもそもお盆とは「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という、ご先祖様の供養をする仏教行事のことです。
亡くなった方の魂が現世に戻ってくる期間(8月13日~16日)のことであり、この間にご先祖様の魂をご自宅などにお迎えし、一緒に過ごし、再びあの世へ送り出すという行事です。
13日には、ご先祖様の魂が迷わずにご家族の元へ帰れるように「迎え火」をご自宅の前で焚くという習慣もあります。
それから数日の間、ご先祖様の魂と一緒に過ごし、15日もしくは16日に「送り火」をご自宅の前などで焚き、ご先祖様の魂をまたあの世へ送り出します。
大きな「大」の字が特徴的な京都五山送り火は全国的に有名ですね。
送り火に代えて仏壇のそばに提灯や行灯を置く地域もありますね。
私が生まれ育った福島県の実家では毎年行灯を並べていました。

なぜお盆に相続の話をすべきなのか?

最近はいろいろと情報も出回っていますので、生前の相続対策や認知症対策は非常に重要だという認識をされている方も増えていると思います。
しかし、実際の対策に動いている方はまだまだ少ないのが現状です。
対策をしなければならないと思う方が増えているのに、ではなぜ対策が進まないのか?
その一番の理由は、相続の話を切り出すタイミングがないということだと思います。
「あなたが亡くなった時の話をしようと思うんだけど...」
などとはなかなか言えませんよね。
「相手の気分を害してしまったらどうしよう?」
それが自然な感情だと思います。

そんな中で、帰省し、ご家族、ご先祖様と過ごす数日間は日常とは少し違い、家族としての一体感を感じる数日ではないかと思います。
相続とは、ご自身で築いた財産はもちろん、ご先祖様が守ってきた財産を未来にどうつないでいくのかということです。
ご先祖様から子ども、孫まで揃うようなお盆の場面というのは、普段はなかなか切り出せないような話でも自然と切り出しやすいタイミングでもあるのではないかと思うのです。

具体的に何を話し合えばいいの?

とはいっても何を話したらいいのかという疑問があるかと思います。
もちろん、遺言を書くとか遺産の分割方法の話をするとか、具体的な相続対策の話をし、実際の行動に移せることが理想です。
ただ、いきなりここまで話を進められるご家族はあまりないと思います。
ご家族それぞれの思いもありますし、法律的なことや税金のことなどの専門的知識をご家族みんなが共有できているということが少ないということもあります。
そのような状況で一気に具体的な対策レベルまで話を進めようとすれば、いずれどこかでひずみが現れますし、話し合いをまとめる負担も大きくなってしまいます。

ではどうすればよいか?
これに関しては、それぞれのご家族の状況によって千差万別なのは確かです。
相続人がどれだけいるか、その関係性はどうか、財産の状況はどうかなど、検討すべき点は数多くあります。
ただ、よりスムーズに検討を進めるための手順があります。
一つづつ段階を踏んでいくことで、ご家族全員でイメージを共有しながら最小限の負担で検討を進めることができ、その結果、後から不満が噴出するなどの問題を減らすことにもつながります。
大雑把ではありますが、ここで代表的な一つのパターンを記します。

1st.財産の状況を把握する

まずは何といっても財産の状況をできるだけ細かく把握し、できればご家族で共有することです。
不動産はどこにどれだけあるのか?誰も知らない不動産があったという事例も実は数多くあります。
預貯金の口座はどれだけあるのか?口座を整理し、不要な口座を解約しておくだけでも相続人の負担はかなり軽くなります。
場合によっては相続税対策が必要な場合もあります。
相続のさまざまな課題がここで浮き彫りになるのです。
相続の具体的な内容を話し合うのはハードルが高いと思われる方でも、財産の状況を確認するぐらいなら負担はまだ軽いのではないでしょうか?
そして、財産の内容を把握していただけでも、いざ相続の局面になったときに相続人が負う負担がかなり軽くなるのです。

2nd.本人やご家族の思いを把握する

例えばご実家は誰に継いでほしいのか?該当者の意思は?もしくは別に継ぎたいと思っているご家族はいないのか?
余裕をもって話を進めているからこそ検討できる内容はかなりあります。
たとえご家族間で希望がぶつかったとしても、この段階であれば対策を施すことで問題が解決できることもあります。
また、相続で問題化する一つの理由として、家族間で思い違いをしていたというのがあります。
実家は長男が継ぐのが当然だとか、介護をした分遺産を多く得るのは当然だとか...
これらの思いを事前に共有しておくことで、後に大問題化することを防ぐことにつながります。

3rd.具体的な対策を行う

具体的な対策を行うのは最後の段階です。
前段階を一つずつ進めてくれば、遺言書を書くとか、生前贈与をするとかの対策は、もう淡々と行っていくだけです。

少しづつ話を進めることのメリット!

余裕をもって動くことで一つ一つ問題をつぶしながら進めることができます。
何かのきっかけを待つだけではなく、お盆の機会に財産のことだけでも話題に出してみる。
そうすることで少しづつ動き出します。
例えば「名寄帳を取ってみたよ」「銀行口座を一つ解約してきたよ」などなど、少しずつ話を進めていく間に、家族内で相続の話をする習慣ができます
こういった関係になれば、相続の話を進めることもスムーズになりますし、何より家族としても絆も深まるのではないかと思うのです。

専門家へはいつ相談すべき?

弁護士や司法書士などの専門家は3rdの段階で登場するものだと思われている方も多くいらっしゃるかと思います。
でも、実は一番大切なのは2ndの段階ですよね。
2ndの段階で穴があった場合、3rdの具体的対策は不完全なものになってしまいます。
効果を持たない対策になってしまう場合や、時には希望に反した結果になる場合もあり得ます。
1stや2ndの段階で専門家へ相談することで検討すべき内容が明らかになり、皆さまの負担も軽くなると思います。
「これから相続の話し合いをしたいのですが、どんなことを確認すればよいですか?」のようなことで構いませんので、是非ともこの段階でご相談ください。

お盆のこの機会に、ご家族としての絆を深められる方を少しずつでも増やしていきたいと思っています。
そのための助けになれればと思っていますので、話してみようかなと思われた方は一度ご連絡をいただけますと幸いです。
また、実際にお話をしてみたという方は、是非そのお話をお聞かせください!

投稿者プロフィール

鈴木 章宏
鈴木 章宏
池袋に事務所を構える司法書士。
不動産の相続登記や遺言の作成支援など、相続手続きに力を入れています。
相続は事前に準備をしておくことで救われることが多くあります。
一人でも多くの方が相続の事前準備の重要性を知り、ご家族の明るい未来を作っていけるような社会にすべく、有意義な情報発信をしていきたいと思います。