“相続の専門家”を志したきっかけ ~祖父の死~

私が相続に携わりたいと思ったきっかけは祖父との最後の思い出にあります。
事務所開設への思いとともに私個人の人となりが少しでも伝わればと思い、初心を振り返る意味も込めてお伝えいたします。

【 目 次 】

祖父との最後の思い出

私が19歳のときに祖父は亡くなりました。
私が小学生ぐらいの頃はまだ農業に携わっており、一緒にトラクターに乗って近くの畑まで行った思い出もあります。
相撲が好きで、いつもの場所で寝っ転がりながらテレビに見入り、いつも決まった日本酒を飲み、ご飯は必ずきれいに平らげる人でした。
そんな祖父が亡くなる数か月前、父に連れられ祖父が入院している病院にお見舞いに行きました。
そのとき祖父はいわゆる寝たきり状態で、ほとんど話せる状況ではありませんでした。
ベッドの横に立ち手を握ったり声をかけたりしましたが、ほどんど反応がないままの祖父。
でも、目だけはよく動かして私を追っていました。

しばらくしてもう帰ろうかとなったとき、祖父がか細い声で私の名前を呼んだのです。
振り向くと私の方へゆっくりと手を伸ばしてくれました。
すぐに近寄って手を握ると、弱い力でしたが握り返してくれました。
しかしあとはもう声を出せる状況ではなく、私はただ涙をこらえ頷くだけでした。

祖父が伝えたかったこととは?

生前の祖父に会ったのはそのときが最後になってしまったのですが、あのとき祖父は何を伝えたかったのか?
いまだにときどき考えます。
「これから頼んだぞ」のようなことだったのかと推測していたのですが、最近私にも子どもができ、少し考えが変わりました。
抽象的な「頼んだぞ」みたいなことではなく、「こう生きてくれ」とか「こういう気持ちを忘れるな」とか、もっと具体的な何かを伝えたかったのではないかと今は思っています。
私が同じ状況になったときを想像すると、最後の言葉が「頼んだぞ」とか「よろしくな」だけではただの他人事、淡白なテレビドラマの世界でしかないなと。
もっと具体的な、血の通ったメッセージなのではないか。
たとえば自分がどれだけ家族を愛していたかや、自分の生き様を見つめなおして出てきた「生きていくうえで大切なこと」をこそ、伝えたくなるのではないかと思います。
家族により幸せになってもらいたいという思いはもちろん強くあると思います。
しかし、それとともに自分の“想い”を伝え、家族にその“想い”を受け継いでいってもらうことで自分の生きていた証を残したいという心情もあると思うのです。

相続に携わることで叶えたい未来

あのとき祖父の気持ちをきちんと受け取ることができたら、祖父はきっとより安心できたのではないか。
また、私も未来を生きる子どもに対して私の“生き様”みたいなものを伝えられたら、それって結構幸せなことなのではないかと感じました。
逆に、祖父の気持ちを受け取ることができなかったことを振り返ると「なぜもっと早くに会いに行かなかったのか」「生前にもと会話をしておけばよかった」と悔いが残ります。
“想い”を伝えられるときに伝えられる環境づくりに貢献したいと強く思った瞬間でした。

最近になり“終活”やエンディングノートなどが世間に浸透してきており、それぞれの死をよりよいものにしていこうという文化が根付き始めています。
私はそこに家族を巻き込みたいと考えています。
家族を巻き込むとは、相続のことや家族の未来についてより気軽に話し合える環境をつくるということです。
家族を巻き込み、それぞれの一生をよりよいものにしていくと同時に、家族という人と人とのつながりの中で“想い”を共有し、残された家族がよりよい未来を生きていけるような社会にしていけたらと考えています。

“想い”を紡ぐお手伝い

一つひとつの繊維を紡いでより強靭な糸を作り上げるように一人ひとりの“想い”を紡ぎ、家族をよりよい未来へ導くお手伝いのできる相続の専門家をめざし、日々奮闘しています。
相続対策をすることは、家族で“想い”を伝えあう最大のきっかけになります。
一人でも多くの方に相続対策を機にご家族と“想い”を共有していただき、安心して以後の人生を歩んでいってほしいと願っています。
そして私も多くのきっかけづくりに携わりながら、心の中で祖父と会話をしていきたいなと思っています。

「相続」の語源は仏教の言葉から来ているようです。
相(形あるもの)を続ける、つまり、因果が連続して絶えないこと。転じて、跡目を継ぐこと。
当事務所では、そこに“想い”も乗せ『“想い”が生き続ける相続』と感じていただけるようなご提案を心がけています。

投稿者プロフィール

鈴木 章宏
鈴木 章宏
池袋に事務所を構える司法書士。
不動産の相続登記や遺言の作成支援など、相続手続きに力を入れています。
相続は事前に準備をしておくことで救われることが多くあります。
一人でも多くの方が相続の事前準備の重要性を知り、ご家族の明るい未来を作っていけるような社会にすべく、有意義な情報発信をしていきたいと思います。